「まだ見ぬ我が子へ」
私たち夫婦は、結婚してからまだ半年もたっていない。お互いに再婚同士だが、二人とも
前の相手との間には子供ができなかった。もう少し生活が落ち着いたら、二人で産婦人科
を訪ねて検査をしてもらおうと話し合っている。そして、もし神様が私たちに子供を与えてく
ださったとしたら、私はこんな約束をしようと思う。
まず、男の子を授かったなら、私は君をスポーツ選手にしてあげたい。父親の私は決して
格好いい男性ではないが、運動能力には恵まれている。できれば、野球でもサッカーでもゴ
ルフでも水泳でも、自分の気に入ったスポーツで名をあげて欲しい。ただし、K1のような危
険なスポーツだけは勘弁してくれ。スポーツは楽しむものであって、決して命をかけるもので
はないのだから。学校の成績は多少悪くてもいいから、他人の心の痛みを感じ取れる人に
なって欲しい。私たち夫婦は、二人とも背が低い方だから、神様にお願いして背を高くしても
らえばいい。顔は、どちらかと言えば母親に似ている方が幸せかも知れない。なんて勝手な
ことを言っているが、本当は君の好きな道を選んでくれればいいと思っている。自分の選んだ
道を、信念を持って力強く歩んで欲しい。私たち夫婦を日本に残して外国暮らしをしたければ、
それも構わない。ただ、一つだけお願いがある。それは結婚相手には、お互いの親を大切に
できる優しい女性を選んで欲しいということだ。そして、君には家族を守れる力強さを身につ
けていてもらいたい。男にとって一番大切なのは決断力と生活力だと私は思っているから。
さて、もし女の子を授かったら、私は大喜びするだろう。私は君と腕を組んで街中を歩けるこ
とを夢見ている。君の場合も、学校の成績はどうでもいいから、とにかく他人の心の痛みを感
じ取れる人になって欲しい。君にはできればソフトボールかテニスをやってもらいたいが、親の
希望などどうでもいい。とにかく自分が打ち込めるものを見つけてもらいたい。茶髪もピアスも
許してあげるから、せめてだらしない格好だけはしないでおくれ。コンビニの駐車場にたむろっ
て携帯電話とにらめっこしている君の姿を想像するのはとても悲しい。そして、難しい思春期に
なっても、父親である私を毛嫌いしないでもらいたい。君にボーイフレンドができたら、私はきっ
と大きなショックを受けるだろうが、陰でこそこそしないで、堂々と彼氏を我が家に招待してあげ
るといい。私より格好いい青年であれば、私は即座に白旗をあげるだろう。結婚しても、いつで
も気軽に我が家を訪ねておくれ。
まだ見ぬ我が子への約束は、考えればきりがない。ただ、一つだけ確実に言えることは、私
たち夫婦は君が幸せをつかむために精一杯の援助をしたいということだ。そして、私たち夫婦
はとても大きな家に住んでいるから、結婚したらぜひ我が家を使って欲しい。
最後に、君に絶対に守ってもらいたいことがある。私は中学校の教師を続けてずいぶん無理
をしてきたから、恐らく長くは生きられないだろう。そのときは、残された母親を十分にいたわっ
てあげてもらいたい。できれば再々婚の相手を見つけてあげて欲しい。君の母親は本当に心の
優しい女性だから、きっとその遺伝子を受け継いだ君も、心の優しい人になっているはずだ。私
は、天国からずっと君たちを見守り続けるだろう。家族の誰かがピンチになったら、神様に特別
な許可をもらって、地上に降りて君たちを助けるつもりだ。もちろん、私の姿は誰にも見えない
だろうけれど。何だか、遺言状のようになってきた。
というわけなので、神様、ぜひ私たち夫婦に子供を授けてください。私たちは、必ず全力を尽く
してその子を育てます。難しい時代なので、途中で道に迷うこともあるかも知れませんが、私た
ちはいつもその子を信じて頑張ります。どうか願いが叶いますように。